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父の入院 2(前回の続き)

前回からの続き

 

父が入院していた病室の前の部屋にコロナ患者が出てしまいました。父は異常におびえて、夕方も6時過ぎだというのに退院すると言い張るだけです。私は根負けして義妹の由美ちゃんに電話をかけました。父がすでに彼女にも退院することを伝えていたらしく、彼女は開口一番に、

「お姉さん、どうしますか!?」とせっかちに聞いてきます。

「急にベッドと言ってもねえ」私はどうしたものか迷いながらも由美ちゃんに、

「この時間にベッドが買える所ってあるの?ニトリって9時ぐらいまでやってるのかな」

「いえ、7時ぐらいまでじゃないですか?」

「もう6時過ぎだしねえ」

「それに、お姉さん、今はコロナで在庫が無い所が多いですから、行ってもありますかねえ?」

彼女は不安にさせることを言います。

「じっとしてても仕方がないから行ってしまおうか」私が決心して言うと、

「そうですね!」と彼女もきっぱりと言うのでした。

急きょ由美ちゃんが車で私を迎えに来て、そのまま一緒にニトリへ行くことになりました。ニトリまでは車で15分ほどです。しかし途中で日も暮れて、到着した時はもう真っ暗でした。

二人で走ってベッド売り場へ行くと、ほとんどの商品が「お取り寄せ」です。すぐに持って帰られるものは中々見つけられません。二人で顔を見合わせて落胆していると、

「お姉さん、あれッ」と言って、売り場のすみっこに折り畳み式のベッドがあるのを由美ちゃんが見つけてくれました。

二人で駆け寄りました。『もう、どんなのでもいい』という心境です。

店員さんをつかまえて取り扱い方法を聞きました。店員さんはやさしくお教えてくれます。私たち二人は心の中で『もう、これでいい!』と決心しています。そして由美ちゃんと私が声をそろえて、

「在庫はありますか‼」と尋ねると、店員さんは急いで無線で確認し始めました。実際に倉庫へ確かめにも行ってくれました。私たちは『在庫よ、あってくれ!』と、祈る気持ちです。

店員さんは5分ほどで走って戻って来て、

「在庫1つだけあります!」と息を切らせながら言うのを聞いて、私たちは、

「あー、よかった」とようやく安堵したのです。

由美ちゃんが、

「大きな荷物にはトラックを貸してくれるんです」と言います。

そうか、ではトラックを借りて取り合えず実家へ運ぼう、ということで私がベッドを台車でレジへ運び、由美ちゃんが貸しトラックの受付へ行きました。

ところが私が代金を支払っていると由美ちゃんが変な顔をして戻って来ます。どうしたんだろうと私が心配に思っていると彼女が、

「お姉さん、トラックが借りられないんです」と言うではありませんか。

「エッ!どうして!トラックが無かったら運べないでしょう」

「もう、閉店だから・・・」

「・・・」私はもう脱力して何も言えません。

トラックが無ければ由美ちゃんの軽自動車に詰めて行くしかないのです。

あれに詰められるのか? 結構大きいよ、このベッドの段ボール。もしかして段ボールから出して本体だけを持って行かねばならぬのか? 組み立て前のベッドを? 

もう、目の前は真っ暗です。

 

続きは次号で