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父の入院5(もっと続き)

前回の続き

 

退院すると言って聞かなかったのに、急に退院を諦めた父は、何故かズボンにこだわっています。

由美ちゃんは『老人のこだわりじゃないですか?』と言っています。

しかし我がままにも程があるというものです。

文句の一つも言いたかったのですが、退院問題でその日はずっと父に振り回されて疲れ果てて何も言う気になれません。。

由美ちゃんが私を自宅まで送ってくれて、翌日10時に病院へ行くことを約束して別れました。すでに夜11時でした。

翌日も良く晴れた猛暑でした。

途中実家へ寄って父の希望の夏用のグレーのズボンを取って由美ちゃんと一緒に病院へ向かいました。

父の入院病棟は何故か成形外科です。

エレベーターを降りると病室へつながる長い通路があり、その入り口で待たされました。

通りかかった看護師さんに父のズボンを渡しました。看護師さんは『なぜ、ズボン?』という顔をしています。

病院ですから患者はみなパジャマです。駐車場の入り口にあるコンビニでもパジャマ姿がほとんどです。

夏用のグレーのズボンである必要は全くありません。

退院の手続きをして数枚の書類に名前などを記入していると、清算の書類がありません。支払額が分かりません。

看護師さんに聞くと、入院した時点で保証金のようなものを支払っているので、退院後にきちんとした支払額が決まってからのお支払いになるそうです。

退院患者が急に増えて清算出来ないということは無く、つまり父が希望すれば昨夜でも退院出来たそうです。

父の勘違いか、聞き違いか。昨夜の時点で退院してしまえば問題は全部昨夜のうちに解決できたのに、まったく疲れます。

また今日も由美ちゃんに申し訳ありません。

「由美ちゃん、何度も来てもらって本当にごめんなさい」私が謝ると彼女は、

「いいですよ、私は仕事も無いし、大丈夫ですから」と言ってくれました。

少し救われました。

「お姉さん、私、お父さんの荷物を車へ運んでおきます」

彼女はそう言って3つ、4つあった紙袋を持って運んでくれました。

二週間程度の入院なのに父の荷物は想像以上に多くありました。

足の痺れがひどいからホッカイロを持って来てくれと父が言ったので、その箱がたくさんあるのでした。

最初は普通のタイプを買っていったのですが、父が普通サイズでなく小型がいいとか、貼るタイプじゃないと駄目だとか色々注文を言ったので、結局ホッカイロの箱が山の様になってしまったのです。

2時間ほど待ったでしょうか。ようやく父が足を引きずりながら歩いてやって来ました。

清潔そうなシャツにあのグレーのズボンをはいています。

まあ、ちゃんとしているに越したことはない、かな。

と私は思いなおして残りの荷物を抱えました。

 

次回へ続く