2022/01/07
前回の続き
父は退院して自宅に戻りましたが、身の回りの事など心配事が増えました。
しかし案外、父は自分で自分のことをするように努力してくれました。
じっとしていると下半身の痺れが痛みに変わっていくので、椅子に座ったり、立ったり、ベッドに横たわったり、色々なことをしては一日を過ごしているようでした。一番困ったのがお風呂に入ることのようで、入浴用の介助椅子を買いました。それで何とか入れるようです。
私は父が退院した翌日に治療に行きました。
脈診をすると容体はひどいものでした。足少陽と厥陰、陽明、太陰などが氾濫どころではありません。破裂寸前です。
井穴という足指の先端のツボを使って治療していきます。これには激痛が伴います。父は何度も「痛い!! 痛い!!」と叫びましたが、構わずに続けます。そしてさらに手足のツボに鍼を刺入して邪気となった気を取り除いていくのです。これも痛い。
90分置鍼して、その後お灸です。父は何度も「熱い!! 熱い!!」と訴えましたが、構わず続けます。
約2時間の治療をして、げんなりした父は「これで良くなるのか・・・?」という顔をして私を見上げます。
「大丈夫! 良くなるからね!」私はいい切りました。
しかしこんな痛い治療がこれから何度続くか分からないのは確かなことで、父がこんな治療は嫌だと言い出したらどうしようかと、小さな不安が胸をよぎりました。
しかし私は2日後、また鍼一式を携えて治療に行きました。
父はあまりうれしそうな顔もせず、前回の治療をした夜は足指の先が痛くて仕方がなかった、と訴えてきました。
脈診をします。
すると邪気は少し落ち着いてきているようでした。
「おとうさん、あれはしなくちゃならなかったのよ。痛いかもしれないけどね」私はきっぱりと言いました。
父には悪魔の宣告に聞こえたかもしれません。
「またやるのか?」父がひっそり聞いてきます。
「やりますよ」私は平気に応えます。
同じ井穴の治療。そしてお灸。
また2日後、治療に行きました。
私が治療の準備をしていると、父が急に、
「もう、お灸は嫌だ!」と言いました。
灸痕を見ると、火傷状になっています。超高齢なので皮膚が薄いのです。
「お風呂に入ると痛い!」と父は訴えます。
まあ、仕方が無い。鍼だけでやっていくか。
私はお灸は諦めて、お灸をするツボにも鍼を使っていくことにしました。
何とかして早く痺れを取っていかなければならない、ぼやぼやしていたら治らなくなってしまう。
私は時間をつくって週に3回父の治療に実家へ行くことにしました。
次回へ続く