不思議な治療

私がここで「不思議な治療」と呼んでいるのは、今からおよそ3500年前に著された「素問・霊枢」という医書に基づく医学の治療です。
本当にとても不思議な治療なのです。
気を操作して病気を治すという方法を発見しています。
「気」という目では確認出来ないものを使っているのです。
現代医学では目で確認出来ないものは存在しません。
だから機器がとても発達しました。
古くは顕微鏡、レントゲンから始まり、血液など体液を分析して数値化する様々な機械、最近ではMRIなどどんどん進化を続けています。
そのお陰で体のどの部位にどういう異常があるか高い精度で分かるようになりました。
しかし反対に言えば数字や画像ではっきり異常が見つけられないと治せないという問題も出てきました。
あるいは異常が見つかったのに治せないという場合もあります。
例えばある部位に炎症が見つかったとしましょう。
この場合ステロイドなど抗炎症剤を注射や服用で投与します。
しかしいずれも全身投与で、ある部位の炎症を取ることは困難です。
ある部位だけに薬剤を集中投与することは出来ないからです。
全身投与では副作用の方が心配です。しかし「素問・霊枢」医学ではある部位の炎症を取ることができます。
気を操作する治療だからです。私たちの心身は気のかたまりです。
そして気とともに動く体液＝津液（しんえき）のかたまりでもあります。
津液の中に脳も内臓もすべてが浮いているような状態です。
その中で気は主に12本の流れをもって全身を周流しています。
その流れは一周身30分ほどのものや、24時間かかるものなど数種類あり、どれもそのルートと時間は非常に正確で完璧な秩序を持っています。
この気の流れとともに津液も流れています。この流れは自然界の流れと同じです。
例えば太平洋の中の親潮や黒潮、大気中の偏西風などです。これらの流れに異変がおきると自然界に異変が起きます。
同じように気の流れに異変が起きると私たちの心身にも異変が起こります。
病気を治すのは治水と似ています。そこで先ほどの問題、ある部位の炎症を取るにはその部位を形成・維持している気の流れを操作するのです。
「炎症を起こしている」という状態は、そこで気が氾濫しているということです。
余分に溜まった気を減らし、氾濫をおさめて炎症の元である熱気＝気を取ってしまうのです。すると炎症は自然と消えていきます。

また形が無いこころの問題も気を動かすことで解決していきます。
乱れた気の流れを元のゆったりした本来の正確な流れに戻して秩序を回復させると、こころもゆったりして、とても楽になるのです。
心身は一体ですから身体が良くなればこころも良くなり、こころが良くなればさらに身体も良くなっていきます。
私が毎日患者を診ていてよく「気持ちがとても楽になった」と言われるのはこのためだと思います。心身の良い循環が生まれれば日々の生活はとても前向きで明るいものになります。
患者自身が治療を受けて「不思議な治療ですね」とよく言います。この不思議な治療は手遅れでなければ多くの症状を取ることができます。
そこで私はこの医学を「究極の医学」と呼んでいるのです。

一方、現代医学がその実力を発揮するのは外科部門です。
切ったり貼ったりする治療です。それこそ目で見える物理的な手法です。
しかし外科的治療では対応出来ない場合や目では見えない人の心身の微妙な問題などは治しにくいのです。
現代医学と素問・霊枢医学の上手な融合で治しにくい病気を治していくのが最も良い治療なのでしょう。